体外受精・胚移植
顕微授精
自然周期法や低卵巣刺激法もありますが、調節卵巣刺激をお勧めします。
1)自然周期法-誘発剤を使用せず、自然で卵胞を発育させます。
2)低卵巣刺激法
・内服のクロミッドやフェマーラを使用して卵胞を発育させます。
3)調節卵巣刺激法
・FSHの連日注射により複数の卵胞を発育させることを目指します。今回の保険適用によりAMHの測定(6か月に1回)が可能となりました。使用するFSHは、1)ゴナールエフ、2)レコベルの2種類です。自己注射ですが、ペンタイプのものがあります。レコベルは、AMHの値と体重によりFSHの投与量を決定する個別化卵巣刺激法が可能であり、その人に適した卵巣刺激を選択することができます。
・排卵を抑える方法は、1)アンタゴニスト法(ガニレスト皮下注)、2)PPOS法(黄体ホルモン内服)があります。ガニレストは、自己注射ですが薬剤がシリンジ内にセットされています。
・卵の成熟(トリガー)には、オビドレル(遺伝子組み換えHCG)の皮下注を行います。自己注射ですが、薬剤がシリンジ内にセットされている注射薬です。また、ブセレリン(点鼻薬)を使用することもあります。
卵胞の大きさが約18mmを超えた時点で経腟超音波装置を用いて卵胞に針を刺し、中の卵を吸引・採取します。痛みがないように静脈麻酔をして行います。採卵は約10分前後で終了します。卵胞の数が少数の場合には、痛み止めの座薬を用いて採卵を行うこともあります。御主人に精子を採取して頂き、運動良好な精子を分離し卵に添加(媒精)します。精子数が少ない場合には顕微授精を行います。その後は、培養器内で培養し、受精・分割の確認を行います。
採卵の2~3日後に初期胚の移植を行います。新鮮胚移植を行う場合は、1)ホルモン値が新鮮胚移植に適している、2)内膜の菲薄がない、3)卵巣過剰刺激症候群のリスクがない、等の場合です。胚をカテーテルにとり、子宮腔内に挿入して胚移植を行います。多胎妊娠の予防のため移植胚は原則1個(場合により2個)とします。余剰胚は、採卵5~6日目まで培養し、胚盤胞に到達した胚を凍結保存します。卵胞の発育が多数で卵巣過剰刺激症候群のリスクがある場合には、新鮮胚の移植は行わず全胚凍結を行います。
採卵後に骨盤内感染および卵巣からの出血が起こる場合があります。子宮内に胚を移植したにもかかわらず、子宮外妊娠となることもあります。採卵後、排卵誘発剤使用による卵巣腫大により、腹痛などがおこることがあります。これは卵巣過剰刺激症候群といって重症化すると腹水や胸水が貯留し入院治療が必要となります。重症にならないようにするためには全胚凍結保存を行います。全胚凍結保存とは新鮮胚移植は行わずすべての胚を凍結保存するものです。採卵周期に妊娠しなければ、重症化する可能性は高くありません。1~2ヶ月後にホルモン補充周期で融解後胚移植を行います。
採卵後、5~6日間培養して発育した胚を胚盤胞といいます。発育のステージにより、1)完全胚盤胞(ステージ3)、2)拡張胚盤胞(ステージ4)、また、細胞数により、1)グレードA、2)グレードB、3)グレードC、と分類を行います。
胚盤胞では新鮮胚移植は行わず、凍結保存・融解胚移植を基本としています。
5日目まで培養し発育した胚盤胞
ホルモン補充周期で胚が着床しやすい状態を作り、凍結胚を融解して胚移植を行います。自然周期で行う場合もあります。
移植胚数は多胎を予防するため1個(場合によっては2個)に制限します。