男性不妊の原因の一つとして、酸化ストレスの関与が明らかとなっています。酸化とは呼吸により取り込む酸素によって起こる反応のことです。これにより活性酸素が発生しますが、この活性酸素が精子のDNAや細胞膜を損傷し、精子の障害、男性不妊を引き起こします。通常は、活性酸素を抑える抗酸化力が働いてバランスが保たれていますが、このバランスが崩れた状態が酸化ストレスです。この酸化ストレスレベルを測定する検査が、ORP(酸化還元電位)測定検査です。
精液検査と同様の方法で精液を採取し、少量の精液をORP電極に滴下するだけです。
生活習慣の改善、精索静脈瘤の手術、抗酸化サプリメントの摂取等により酸化ストレスレベルの改善が期待できます。ただし、すべての方に効果が表れるわけではありません。
精子はDNAを卵子に運ぶのがその役割ですが、男性不妊の方では、DNAと核タンパク質複合体であるクロマチンの欠陥や、DNAの切断された精子の割合が多いと言われています(精子DNA断片化)。DNAの断片化が高率にあると、人工授精や体外受精、顕微授精での成績が不良であることが報告されています。また、流産が増加することも明らかとなっています。
体外受精や顕微授精で妊娠に至らない場合、または流産を繰り返す場合
精液検査と同様の方法で精液を採取後、密度勾配遠心法により精子を分離します。
精子を測定しやすい濃度に調整し、TNF buffer (pH7.4) に懸濁、酸処理(pH1.2、30秒)を行います。
酸処理後すぐにアクリジンオレンジを含む中和緩衝液を添加してフローサイトメトリーで測定します。
精子クロマチンの変性したDNA(一本鎖DNA)は赤に、正常なDNA(二本鎖DNA)は緑に染色されます。全体の中で、赤に染色された集団の割合を精子DNA断片化指数(DFI)で表します。また、精子形成過程で精子核が十分に凝集されなかった未熟精子はHDSと分類されます。