男性不妊について

男性不妊について

不妊原因の割合は、1.男性に原因24%、2.男女ともに原因あり24%、3.女性に原因41%、4.不明11%と言われています。実際の診療では、男性側の原因は50~60%くらいあるのではないかと感じており、男性の精液検査は大変重要なものになっております。

精子は精巣で作られます。精巣内には精細管という細い管があり、そこから74日かけて精子が作られます。

男性不妊の原因

1.造精機能障害

精子を作る機能に問題がある状態です。原因不明の場合が多いですが、精索静脈瘤や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)による精巣炎などの場合もあります。乏精子症や精子無力症、無精子症となります。

酸化ストレス

酸化ストレス

近年、男性不妊の原因の一つとして、酸化ストレスの関与が明らかになりました。酸化とは呼吸により取り込む酸素によって起こる反応のことです。これにより活性酸素が発生しますが、この活性酸素が精子のDNAや細胞膜を損傷し、精子の障害、男性不妊を引き起こします。通常は、活性酸素を抑える抗酸化力が働いてバランスが保たれていますが、このバランスが崩れた状態が酸化ストレスです。

2.精路閉塞

精子の通り道(精細管)の閉塞がある場合です。幼少時の鼡径部の手術の影響やクラミジア感染などによる精巣上体炎などが主な原因です。閉塞性無精子症となります。

3.精索静脈瘤

精巣の静脈が膨らみ、血流が滞るため精巣が温められ精子が作られにくくなります。

4.その他

精子の状態をよくするには

  • 禁煙
    喫煙は精子の運動率の低下をもたらします。
  • トランクスのすすめ
    精巣の温度が高いと精子に影響が出ます。ブリーフよりもゆとりのあるトランクスがおすすめです。
  • 長時間のサウナは避ける
    高温は精巣によくありません。長時間のサウナは避けたほうがよいと思われます。
  • 禁欲期間は短めに
    長い間精子を出さないでおくと、運動精子が減少します。最適な禁欲期間は3~5日位と言われておりますが、1~2日くらいがよいとの説もあります。

精子の状態をよくするには

男性不妊の診察・検査

  • 問診
    今までの病歴や生活習慣、気になることをお聞きします。
  • 精液検査
    精液を採取して検査を行います。精液1ml中に1,600万個以上、精子運動率42%以上がWHOの基準値となります。この数値は、妊娠したカップルの男性の下位5%の数値となります。ひとつの目安と考えていただきたいと思います。
  • 精子特性分析器による検査
    当院では精子特性分析器(SQA-V)による検査も行っております。精子運動率と精子の運動スピードを考慮して数値化した精子自動性指数SMIが80以上を正常と判断しています。SMIは人工授精時の精子回収率とも相関し、また、体外受精・顕微授精の適応の判断材料にもなります。
  • 触診・視診・超音波検査
    精巣の大きさや精索静脈瘤の有無などを診断します。
  • ホルモン検査
    採血によりLH、FSH、PRL、テストステロン等の測定をします。
  • ORP(酸化還元電位)測定検査
    精液中の酸化ストレスレベルの測定を行います。詳細はこちらをご覧ください。
  • 精子DNA断片化検査(精子クロマチン構造検査:SCSA)
    切断された精子DNAの割合を調べます。詳細はこちらをご覧ください。
  • その他
    必要に応じて染色体検査、AZF検査、精液培養等の検査を行います。

男性不妊の治療

1.無精子症

1.無精子症

無精子症とは精液中に精子が見つからない状態をいいます。精子の通り道が詰まっている閉塞性と、精巣の機能が低く精子の数が極端に少ない非閉塞性があります。
TESE(精巣内精子採取術)
無精子症の診断・治療にはTESEを行います。この場合には手術ができる施設に紹介させていただいております。

2.精索静脈瘤

精巣の静脈の拡張により精巣が温められ、精子に影響が出るものです。手術が必要となりますので、この場合には他院に紹介させていただいております。

3.乏精子症や精子無力症

令和44月より男性不妊治療も保険適用となりました。乏精子症の方では、クロミフェンクエン酸塩(クロミッド)内服の治療が可能となりました。精液検査・ホルモン検査・超音波検査施行後、希望される方にはクロミッドの治療を行います。また、精子無力症の方には漢方療法を行います。これらは保険で行う治療となります。

また、いままでどおりサプリメントの摂取もお勧めします。

上記治療を行っても改善しない場合には、工授精や体外受精・顕微授精を行います。

4.精子DNA断片化が高率であった場合

生活習慣の改善、精索静脈瘤の手術、抗酸化サプリメントの摂取等により断片化の改善が期待できます。ただ、すべての方が有効であるわけではありません。これらの治療を行っても改善しない場合には、スパームセパレーターを使用し、精子DNA断片化のない精子のみを回収し、授精に用います。

当院では土曜日の午後に男性不妊外来を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。